一級建築士

Naoyuki Kikkawa

Kichi architectual design

“ともに未来の家をつくりあげる工程は
楽しくて楽しくて仕方がない”

家を設計するときのプロセスは?

家づくりを素晴らしいものにする、ご依頼主との化学反応

家を建てたいというご要望をいただいたら、まずはたくさんお話を伺います。
必ずお伺いするのは、生まれてから10代、20代をどんな家で暮らしてきたか。広いリビングがほしい、独立した子供部屋がほしいといった要望は、かつて暮らしていた家の間取りなどが影響していることが多いからです。

設計を依頼してくださった方とのお話は、いつもかなり脱線していきます。
私の場合、お話を伺うことでどんどんその方のことが好きになり、ますますその方のことを知りたくなり、よく聴く音楽、昔やっていたスポーツ、仕事のこと、ご家族の関係、ちょっとした癖など、多岐にわたってお話を伺うことになります。

そうするうちに、ふっと「この方にはこんな家がいいのではないか」と、その姿が頭に浮かぶのです。まずは、そこから図面にしてご提案し、今度はご依頼主からご要望を返していただき、さらにご提案して……というのを繰り返す、私とご依頼主との化学反応でどんどんいい設計になっていくように思います。

ですから、私にとってご依頼主といっしょに未来の家をつくりあげる工程は、楽しくて楽しくて仕方がありません。「これがベストだ」と思うものをご提案したつもりが、「こういうふうにできないだろうか?」なんて新たに宿題をもらい「そうかなぁ」と、家に持ち帰る。しかし、そこから考えを進めると、最初に提案したものよりもさらに素晴らしいアイデアが浮かんでくるといったプロセスが、いい家づくりには欠かせません。またこれによって僕自身も育てていただいていると思っています。

建築士として大切にしていることは?

“無駄”とも思えるこだわりが、その家の美しさ、遊び心に

ふっと「この方にはこんな家がいいのではないか」というイメージが湧き上がってくる時、決まって、その家ならではの個性のようなものが、デザインとなって一緒に思い浮かびます。
それは、機能としては“無駄”ともいえるものですが、その“無駄”なものが、佇まいの美しさだったり、遊び心だったり、その家だけがもつ顔をつくりだします。

たとえば、この家の場合、思い浮かんだのは、箱が積み重なったようなデザインでした。一階のラインと、二階の底のラインが一緒であることが、このデザインの肝となります。
しかし、通常木造建築の場合、一階と二階の間に梁(はり)がくるため、めり込んだようなデザインになってしまいます。これを当初のデザイン通り、どうやったら実現させることができるか。そのためには、努力を惜しむことはありません。

お客さまとの化学反応を大切にすること。そして、建築士として頭に浮かんでくるものを、きちんと世の中につくりだすことは、私にとってとても大切なことなのです。

どのようにディテールを積み上げるのか?

そこに住む人の日々と暮らしを徹底的に想像すること

設計をする際、ご依頼主やそのご家族がどのように時間を過ごすのか、そのことを具体的に想像します。

たとえば、ご自宅であれば、リビングに置かれた椅子に座ると、どんな大きさの窓があり、そこから何が見えるのか。窓の外の風景は季節ごとにどのように変化し、その椅子に腰掛ける人にどんな影響を与えるのか? 階段の横の壁に窓をつけたら、一歩一歩と階段を上り下りするたびに、見える景色が変わり、ただの機能である階段も、日常を豊かに過ごす仕掛けになるのではないかなどなど、依頼してくださった人の日々と移り変わる季節を想うと、想像はどんどんと膨らんでいきます。
そこで想像した一つ一つのディテールが、その家を形づくっていくことになるのです。

空間における家具の役割とは?

空間と家具には人と人の関係を変えるほどの力がある

私が設計する家は、白いキャンパスのような存在でありたいと思っています。その家にどのような色を選び、時を経てどのように変化させるのかは、そこに住まう人に自由に描いてほしいと思っているからです。

しかし、私自身も、この空間にはダイニングテーブルを置いて…、ここには大きなソファがあれば…というように家具の位置などをイメージしながら設計しています。ですから、もし住む人が、その家をどんな色合いで仕上げたいのか、そのことについて相談してくださるなら、それはとてもうれしいことです。

あるご自宅を設計したときのこと。ワイン好きなご夫婦のために、料理をしながらワインを楽しむことができるキッチンをご提案しました。キッチンスペースを少し広めにし、そこに小さなテーブルと椅子を置く空間をつくったのです。
その空間ができたことによって、おふたりはキッチンで簡単におつまみをつくり、すぐ脇のテーブルでワインを味わう、そんな夫婦の時間を大切にしてくださるようになりました。

こうした場所に置く家具がただの作業台だったら、そこは機能だけを重視した作業の場となったかもしれません。しかし、たとえばビンテージの美しい北欧家具を選べば、そこはおふたりの時間を豊かにする空間になります。
空間と家具には、おふたりの関係も変えるようなそういう力があると私は思っています。

「日々を豊かに過ごすための、素敵な空間や家具を選びたい」、そんなふうに考える方との出会いを楽しみにしています。