空間デザイナー

Eri Kishimoto

“できあがる空間だけでなく
プロセスそのものも大切に”

空間デザイナーの仕事とは?

唯一無二のストーリーを有した空間デザイン

店舗やオフィスをつくる時、機能、デザイン、予算、立地など、さまざまな要件について考えながら、検討していくことになります。
空間デザイナーという仕事は、単に空間をつくるだけでなく、そうしたさまざまな事柄のバランスを取りながら、一緒に目指すゴールへと向かう仕事だと思っています。

そのため、私の仕事には徹底したヒアリングが欠かせません。そこで知りたいのは、店舗であっても、オフィスであっても、「その空間で過ごす人にどのような思いを持ってほしいのか?」ということです。店舗であれば、お店を訪れるお客様や働く皆さん、オフィスであれば、従業員の皆さんや来客者の方々が、どのように感じる場所にしたいのか。
その問いにつながる空間をデザインすることが、私の役割だと思っています。

それは決して、ただかっこいいだけだったり、○○風に当てはめるだけのデザインではありません。そこにしかない、唯一無二のストーリーを有した空間デザインが生まれることになります。

なぜコンセプトが必要なのか?

コンセプトがあらゆるクリエイティブの軸になる

少し例を挙げながらご説明します。東京・池袋にできた飲食店の事例です。

このお店の特徴は、固定のメニューを設けず、旬の食材を用いて、お客様に寄り添ったメニューを提供することでした。お料理も食用花を用いるなどアートな雰囲気があり、カップルでのご利用も多いお店を目指しておられました。

その日の食材と、お客様の要望と、シェフの持ち味がかけ合わさった「メニューのないレストラン」という方向性を共有しながら、さらに詳しくお話を伺って感じたのは、ほかにない実験的なスタイルのお店だということでした。
そこで、このお店の空間づくりのコンセプトとして「魅せる実験室」を提案。唯一無二のストーリーをつくりあげていきました。

実験室に見立てた厨房で、シェフが化学反応を起こすように料理をつくる。その様子がコの字型のカウンターから垣間見えるように設計。来店者が「今日はどんなお料理をいただけるのだろう」とワクワクしながら待つことができる、そういう空間をデザインしました。
また、モルタルやアイアンなど無機質でマットな素材と、パンチングメタルやガラスなどのメタリックと光沢のある素材でコントラストをつくり、実験室らしさをイメージしながらも、カップルの方がデートなどに使いたくなるような、色気のある上質な空間を演出しています。

このように、コンセプトが、設計や空間に用いる素材、お店全体のムードを牽引するなど、あらゆるクリエイティブな作業の軸となります。
また、何かを迷った際の道標のような役割を果たします。

空間デザインができるまでのプロセスは?

ブレることなく目指すゴールにたどり着くために

お客様と打ち合わせを行うと、「なんとなくイメージはあるけれど、なかなか言葉にできない」という声をよく耳にします。それは当然のことです。お客様にとって大切な場所であればあるほど、さまざまな思いがあると思います。
ですから、そこにあるイメージを、共通の認識が持てるよう言語化し、デザインに落とし込むのが、空間デザイナーの仕事だと思っています。

どんな人が訪れる場所なのか、レストランであればランチもディナーもあるのか? 価格帯は?
働く人の人数は?など、一見空間には関係ないと思われるような企画面もすべて伺いながら、「どんな人に、どのように過ごしてほしいのか」、そのためにどんなコンセプトを持った空間にするのかを導き出していきます。

その際、お客様がどういう空間を好むのか、望んでいるのか、迷うプロセスも大切です。まずは選択肢を並べ、絞り込み、納得しながら一緒に空間をつくりあげるプロセスが、その場への愛着につながるからです。その際、客観的な目を持った空間デザインのプロだからこそ、時には二人三脚で、時にはお客様の手を引き導きながら、目指すゴールに向かってブレることなく進むお手伝いができると考えています。
できあがる空間だけでなく、プロセスそのものの設計者でもありたいと思うのです。

物件選びから?空間デザイナーの仕事の範囲とは?

初期段階から関わることで時間もコストも効率的に

私は空間デザインだけでなく、物件選びからロゴ作成まで、空間をつくりあげるすべてのプロセスのご相談にのっています。 プロセス全般をお任せいただくメリットは、すべての工程において、コンセプトを軸に考え、実行するため、その空間ですごす人にブレることのない一貫したメッセージをお伝えすることができること。 また、早い段階からお任せいただけることで、時間的にも、コスト的にも、効率的なご提案ができると考えています。

空間デザイナーが指揮者となって施工者、工事関係者などのパートナーとコンセプトを共有。関係者が優先順位を理解しながら関わるため、機能、デザイン、予算など、すべてがバラバラになることがありません。時間やコストをかけるべきところにかけ、抑えるところを抑えるなど、バランスをとりながら空間づくりを進めることができます。

空間における家具の役割とは?

どんな家具があるか?から、人は多くのメッセージを受け取る

家具は座ったり触れたりするなど、人との距離感が大変近いものです。見た目のデザイン性だけでなく、その使い心地や機能から人はさまざまなメッセージを受け取ります。

たとえば、オフィスのエントランスにどんなソファを置くのか。選んだソファの高さや柔らかさから、ゆったりと談笑することも想定しているのか、少しの時間待っていただくだけの空間なのかなど、その空間の意図やメッセージを表すことができます。また、オフィスやミーティングルームの椅子やデスク、照明器具によって従業員の働きやすさや、心持ちも変化します。

ですから、「その空間で過ごす人にどのような思いを持ってほしいのか?」、そこから導き出した空間コンセプトにそって、家具を選ぶことがとても重要になるのです。
また反対に、コンセプトを表現する家具を中心に据えて、空間などその他の要素を組み立てていくこともできます。
空間と家具はパートナーのような関係。その空間に適した家具を選び、家具に適した空間に仕上げるお手伝いができればと思います。